銀河英雄伝説外伝3 千億の星、千億の光

田中芳樹(2009年)「銀河英雄伝説外伝3 千億の星、千億の光」創元SF文庫(徳間ノベルズ1988年)

何となく、ラインハルトとヤンが主役でない外伝に対するテンションが上がらず、少し時間を置いての読書になった。が、読み始めたら面白くて止まらなくなった。意外にも二人もけっこう登場する。準主役といえる人物たちも続々登場してくる。
そしてシェーンコップという伊達男の真髄!格好良いなぁ。

正伝よりも前の時間軸を読んでいて、気付いたことがある。
たとえば正伝では、ラインハルト陣営には豊富な人材が揃っているのに、ヤンは人材も物資も乏しいという状況が度々描かれていた。これは、野望をもったラインハルトが自ら人材と権力を手中に収めながら出世していった帰結なのだ。帝政における貴族だからというのもあるが、やはりそもそもの目的が違うことによる、当然の差異だったのだ。ラインハルトは幸運ではなく、努力によって強大な力を手に入れたのだ。

外伝を読むことによって、正伝で描かれた絵の中に微妙な陰影が宿るような感覚がある。素晴らしい!たとえば、皇帝とその元侍従の真意など、なんとも言えない。






 なんらの政治的な権利や経済上の平等をあたえるわけではなく、お祭りさわぎとアルコールとで発散をはかるのは、露骨な民衆蔑視であるのだが、二〇世代にわたる無権利状態は、一般民衆の権利意識を鈍麻させ、人々はすなおにお祭りを楽しんでいた。ラインハルトに言わせれば、“家畜的な従順さで、判断能力のかけらもない”ということになるのだが。あるいは、平民たちはもっとしたたかに、専制政治下における“老婦人の夏”の一瞬を楽しんでいるのかもしれなかった。
~「第五章 初夏、風強し」より~
 それぞれの陣営には、それぞれの独自な事情がくわわる。銀河帝国は、全宇宙を統一支配する唯一の正統政体として、凶悪な叛乱軍を討たねばならず、ときとして皇帝自身の名誉欲が大義名分に拍車をかける。自由惑星同盟では、悪の専制帝国にたいする自由と正義の戦いをいどみつつ、政府は選挙での勝利を望み、軍首脳と癒着した軍需企業は、失われる人命より補給されるべき物資の数量に関心をもつ。ついでにいえば、軍需産業の経営者とは、けっして戦死しない人間のことだ。
~「第七章 真実は時の娘」より~
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by saint05no44 | 2018-02-11 22:00 | 読書日記 | Comments(0)

読書量が減ったことへの危機感から始める読書日記。


by アガサ